二人で住む為に借りたマンション。
 もし別れたら……どちらかが出て行って、ここに一人で住むには広い上、家賃が勿体ない。

 だから引っ越し面倒だなあとか、敷金礼金勿体無いなあとかが頭を巡っては、仲直りした方が楽だから、俺の方が折れて愛莉に謝罪してきた。愛莉が好きだった、から。

 それにやっぱり親の影響力は大きい。
 俺一人が放り出していい話じゃないんだ。
 拳を握り視線を下ろす。

 目を潤ませながらこちらを見上げる愛莉は相も変わらず可愛い。

 ……けど、

 それでも……

 やっぱり──

(もう……無理だ……)

 何より愛莉が口にした「我慢」。
 そんな事もう、ずっとしてきた。

 馬鹿みたいに……

 そもそもそれって俺の義務なの? 好きになったのが俺のが先だから? 一緒に暮らすんならさ、お互い譲り合って生活する方法を考えようとか、そういう話はしてくれないのかな。

 今後、ずっと、一生──……?

(お姫様みたいに扱って欲しいって言ってんのかな? やって来たよ俺なりに。でももう辛いんだ)