とはいえ同じ職場に勤めてると知ってるのは自分だけみたいで、三上さんは知らない。彼女は相変わらずどこかぽやんとしているし、俺に興味が無いんだろうな。
 こうなると、もう少し周りに意識を向けてくれないだろうかと思う程、自分が不憫に思えてくる。

(仲良くなりたい……)

 社会人って環境の変化は、慣れ親しんだ学生の身分との齟齬を、身体に疲労という形で溜めていった。
 勤め始めた仕事は面白いとは思うけれど、分からない事だらけで心身を摩耗する。

 定時よりずっと遅くに退社して、重い身体を押して最寄りの駅に辿り着く。
 最近では恒例となった、改札を潜ると迎えてくれる月を見上げながら、何となく溜息なんかを吐いてみた。

「何してるんだろ、俺……」

 真っ直ぐに帰るのが嫌で、踵を返した夜の公園に彼女がいた。
 酔っ払った赤い顔で、据わった目をして滑り台を滑りまくっている。