「帰る!」
「えっ? もういいのか」

 けれど隣から掛かる男の声に私の頭は既に「?」でいっぱいである。

(……私、ここで何してたんだっけ?)

 ふと見れば自分の手には水のペットボトルを握りしめられていた。

(酔い覚ましに買ったのかな?)

 チラリと見知らぬ男に視線を向けて、良く分からないままに会釈をする。そうして、とにかく帰らなくては……という意思に従い自宅に向けてふらふらと歩き出した。

「お、おい! ちょっ……」

 酔い半分、覚醒半分な状態なので、その後を少し離れて男がついて来る事には気付かない。
 時々、不用心すぎるとか、禁酒しろとか聞こえて来る小言については、気のせいだと思う事にした。