「気が散るみたいなんです……すみません。お気遣いありがとうございます」
困ったように笑う彼女に対して眉間に皺が寄る。
──なんであいつの都合に付き合ってんの?
そもそもあいつも見栄の為に呼びつけておいて、放置って冷たく無いか?
イラつき出す俺に静かな声で彼女さんが口にする。
「ご迷惑ですか?」
「……いや」
そんな事を思ってる訳じゃ無いけど……
もし日向に「彼女を放っておくなよ」とか言ってしまえば、俺のその言葉を盾に「他の部員から苦情があったから」とでも彼女に対して言い兼ねない。
俺と同じように、あいつも俺の事は嫌っているからな。だから……
「……彼女さん、名前何て言うの?」
そんなあいつの都合に付き合うのが嫌だと思った俺は、それなら彼女さんと仲良くなれば、あいつに苦言を呈してくれるかもしれない、なんて単純に考えて。深く考えもせず三上さんに声を掛けた。