うん私、現金だなあ……なんて思いつつ。
 まあいいか。
 好きな人が出来るなんて、きっと当分無い。その頃には河村君とこんな距離感で話す事も無いでしょう。
 どうしても悩んだり迷ったりしたら、その時だけ相談させてもらおう。
 今はそんな存在が出来たってだけで心強い。

 チラリと河村君を見ると、意外な事に少し顔を赤らめたりしているので、もしかして勢いで言った科白に後悔してるのかなー? なんて首を傾げる。
 心配しなくてもこれを機に依存、なんてしませんよ?

「どういたしまして……じゃあ……」

 けれどそれと共にするりとお互いの掌が合わさり、今度は私の方が目を丸くする。

「いい男ってのがどういう奴か教えてあげる」
「……っ」

 口を開けたまま固まってしまったのは許して欲しい。
 だって声も出なかった。
 だってだって河村君が言うと何と言うか……様になってしまって突っ込みどころも無かったのだ。

 ぱくぱくと口を開閉してなんとか呼吸を整えていると、手はそのままに、河村君と私はそのまま駅まで歩き出したのでした。