『あの……智樹と会ったりしてないよね?』
 思い詰めたような、咎めるような口調の、彼女の第一声はそれだった。

「……会ってませんけど……」
 当惑しながらも正直な返事が口から溢れる。

 愛莉さんは突然何を言い出すのだろう?
 だって別れてまだ二週間だ。こんな早々に寄りを戻すような別れでは無かったし、振られた側の私だって会いたいと思わない。
 その理由──

 その当人から突きつけられた理不尽に苛立ちを覚えるのは、私が狭量だからだろうか。

 会場からそっと抜け出し人の邪魔にならない場所を探し歩きながら、唇を噛む。

『ずっと付き合ってたけど……』

 え?
 言葉になったかと思ったそれは、けれどよく頭に響いて木霊して……

『何か最近様子がおかしくて……』

 ???

 何だろう……?
 愛莉さんの科白にどこか違和感を感じる。
 二週間を、ずっと、と言うだろうか。
 それともただの聞き間違えだったか。
 嫌な考えが頭を過ぎる。