しかし飲み会の時間中、いや開始前から私は気が気では無かった。
 何故なら智樹の幼馴染、愛莉さんから会いたいと連絡があったからだ。
 
 実は愛莉さんとは一度だけ会った事がある。約二年前の話で、智樹に恋人が出来たなら会ってみたい、という彼女の要望に基づいての事である。

 どうする? と智樹に聞かれ、付き合い出したばかりの私は、嫌とは言えなった。智樹は愛莉さんを大事にしているって知っていたから……
 
 それで智樹を含めてランチを一緒にして、LINEを交換した──んだけど。
 今の今まで連絡を取り合った事なんて一度も無かったのに……
 何でこのタイミングで……?

 ……とは言え私は会う気は無い。
 電話で済みませんか? と返信をして、仕事上がりに連絡をするつもりでいる。

 家に帰ってから彼女と話すのが何となく嫌で、だから飲み会のどさくさに紛れて、ちょっと席を外して少しだけ話そうと思ったのだ。

 そうして私は河村君の隣というのをやんわりと断って、出来るだけ出入りしやすい位置を確保し、ソワソワしながらスマホが鳴るのを待っていた。