「……仕方ない、送るよ」
「え? だからいいんですってば! 私はもう少し滑って気が済んだら勝手に帰るんで放っておいて下さい」
「そう言う訳には行かないだろう。家は──」

 言いかける確か警察官に私は全力で抵抗した。
「嫌だー! 帰らん!!」
 けれど男はじたじたと暴れる私にぴしゃりと言い放つ。
「いい加減にしろ! 大体あと何回滑れば納得するんだ!!」

 その言葉に私は不覚にもウルリと来てしまう。
 いや、酔ってないですよ。
 酔って泣き上戸になってるとかじゃあ無いですよ。

 けれどそんな私の情け無い顔に一瞬怯んだ男はチラリと自販機に視線を逃がし、「何か飲むか?」と不本意そうに口をごもる。
 ……もしかして声を荒げた事を気にしてるんだろうか? 酔っ払い相手にしてれば苛立つのも仕方ない。私は酔っていないけれど……

 しかしまあそうですか、つまりこんな夜中に酒カッ食らって無心で滑り台を滑り続ける私の話を聞きたいと! いいでしょう話しますよ! これから話す事があなたの今度に役立つ日がくるかもしれない! いやきっとなる! これからの人生、心の宝箱にしまって家宝にして過ごして下さい男なら!