愛莉の事が大好きだった。
 子供の頃からずっと。
 可愛いくて、猫みたいで、ふわふわと甘い雰囲気の幼馴染。
 男子に人気があったから、手なんて届かなかったけど。
 愛莉は中高と学園中の人気者と付き合っては別れてを繰り返して、女子に嫌われていた。

 モテるから僻まれるんだろうな、そう思って泣いてる愛莉を慰める男子もまた多くて。俺も愛莉が気の毒で、彼女を悪く言う女子を叱ったり睨みつけたりしていた。

 ……そんな俺は愛莉のお眼鏡には敵わなかったけど、それでもたまに「ありがとう」と、目を潤ませてお礼を言われれば、天にも登る気持ちだったんだ。



 愛莉が好き過ぎて、俺は上京した。
 愛莉が東京の学校に行くと言っていたから。
 けれど愛莉は志望校に落ちてしまった。
 がっくりと落ち込むところに雪子が現れて……

 受験の日に見かけたなあ、なんて。
 隣の席に座っていた人を、席を立つ時に目印にしていたから覚えている。
 物静かな雰囲気だけど、暗いとかでは無くて、楚々とした印象の人だった。

 何となく嬉しくなって話し掛けたのが始まりだった。