母が葛藤の中、雪子にどうするか聞いた時、雪子が「貴也さんと一緒にいたいです」と答えてくれた時は顔がにやけるのを止められ無かった。

『未来の兄貴のお嫁さんなんだから、一緒におじいちゃんちに来ればいいんじゃない?』
 と言ってきた玖美は睨んでおいた。
 
『実は仕事が繁忙期で……』
 困った風の雪子に、得心顔で俺も頷く。
『そうだよ、玖美。俺たちは社会人なんだから』

 そう返せば玖美は頬を膨らませて不満そうにしていたけれど。『雪子さんとお泊まりデートしたかったのに』なんて。
 
 それは俺の科白だよ。
 なんで俺より先に達成しようとしてるのか。

 ……でもこのままだと初めての旅行が新婚旅行になってしまうのか。……まあ、それはそれでいいけど。何も気に留める必要も無いし。