「じゃあ、こう言うキスも、初めて?」
「んんっ!?」

 口の中に入って来た異物に混乱して声を上げたが、その声ごと飲み込まれた。
 いつからか力が抜けた身体を労わるように、ベッドに横になっていて、その上に貴也がいる。

 押し返そうとする舌が絡み合って、変な感触に身体がさわざわと泡立った。
 息苦しさも合わさって眦に涙が溜まる。
 両手を貴也の胸の前に置き、押し返そうとする力が入らない。へなへなと抜けていく力が、まるで貴也に吸い取られていくように感じた。

「雪子……」
 やっと少し離れてくれた貴也をぼんやりと見上げる。
「うん……」
 呼ばれてるのが分かったから、返事らしきものを返したけれど、意図は汲んでいない。
 近くにある表情は、酷く悩ましげだ。