再び重なる唇に身体を強張らせる。
「じゃ、俺二回」
 唇を僅かに離して、すぐそばの真剣な眼差しが告げる。熱心なその瞳を受け止め切れなくて、つい現実逃避を起こし、真面目に返してしまう。
「……えっと、正確には、三回目、かと……事故チューが、あるから」

 その言葉に貴也は固まり、少しだけ不満そうに顔を顰めた。
(あ、情緒もへったくれも無かったかしら……)
 後悔が込み上げる雪子に、貴也は迷いなく首肯する。
「分かった」
 何が?
 ぱちくりと瞬きをする間に、もう一度。唇が合わさって、目が合って。
「数え切れないくらいする。幸せなキス」
「……っ」
 
 それはとても、嬉しいけれど……そう言う事でもないような? それに……
(私の心臓、持つかしら……?)

 けれど、再び合わさる唇が胸の鼓動と相まって。
 心地よさに身を任せて、貴也に掴まれたままの両手をゆっくりと持ち上げた。
 意図を察した大きな手が離れて、雪子の背中に回される。
 雪子もまた、その両腕を貴也の背中にそっと置いて。温かい身体に支えられて、二人で幸せを享受した。