頬を押さえながら白旗を上げる私に河村君は容赦無い。
「駄目駄目、ずーっと我慢してた俺の重たい愛をこれからたーっぷり教え込んであげるから。もう呼び方も戻ってるしさ。照れてもいいけど逃げないでね。逃がさないけど……」

 逃げるも何も……
 果たして私に逃げる場所なんてあるのだろうか、とはたと気がつくも……急いで首を横に振る。

 家族ぐるみで囲い込まれているなんて、偶然だ。職場も一緒で……そうだった。付き合ってる事になってるんだった。
 そうせざるを得なかったのだけれど、今となっては都合の良すぎる展開となったものだ。なんて、首を傾げるも……まあ……逃げる気なんて勿論無い訳で。