何でだよ。

 何で雪子の隣にあいつがいるんだ。
 何で雪子は俺の隣に戻ってこないんだ。

 何で、何で、何で……

 目についた警察官の制服に慌てて踵を返した。
 自分はあんなものに目を付けられるような人間じゃない。関わりたく無くて直ぐに逃げた。
 いらいらと爪を噛む。

 あの後、家の前で暫く張ってたけど、雪子が帰ってくる様子は無かった。あいつと一緒にいるのか? 河村と?

 何で、どうして……
 学生の時はあいつのアプローチにも気づかずに、俺に夢中だったくせに。裏切ったのか……? もしかして俺が気付かなっただけで、ずっと……

 いらいらする。
 
 駅に向かう小さな商店街を、すれ違う人たちが俺の雰囲気の悪さに道を開けていく。
 それがまた腹立たしくて、前を睨みながら歩いていると、目に何か光が当たった。