職質にいくつか答えて、往来で大声で話さないようにと注意を受け、その場を開放されて……

 今日はとても無理だと思った。
 自分の家に帰るのが怖い。

 だって智樹は恐らく私の家に向かっていた。
 場所を知っているから。
 家に篭って鍵を開けなければ入って来れないのはわかっていても、ふとした拍子に智樹がそこにいるかもしれないと、そう考えただけで怖くて眠れなくなるだろう。
 いっそ圭太に話して一緒に家で過ごして貰おうかと思ったものの、受験生に余計な心労は掛けられないと、直ぐに被りを振った。

 どうしようと奥歯を噛み締める私に、河村君がホテルに泊まろうと提案してくれた。
 いくらなんでも勿体無い。
 直ぐにそんな思考が頭を過ったが、見透かしたように河村君が駄目だと言い切った。

「日向は三上さんの家を知ってるんだろう? また来るかもしれないし、三上さん一人であいつを追い払えるの?」