どこに行けばいいんだろう、とはたと止まり、行き先といえば自分の家しか無いと思い立つ。
 けれど、もしそうなるのなら、河村君が私の家に入るのは初めてなのだ。

 何と言っていいか分からなくなり、そのまま歩き出す。
(私は何度もお邪魔しているから……不公平かしら? 呼ばないなんて失礼かしら?)
 ぎくしゃくと歩いていると河村君から声が掛かった。

「あのさ……」

 振り返ると少し気まずそうに笑顔を見せる河村君が頭の後ろを摩っている。

「流石に悪いから、三上さんの家にお邪魔するのはちょっと……」
 苦笑いする河村君に私は思わず声を張る。
「そんなっ、迷惑かけてるのはこっちなんだから!」
 

 自分の口から飛び出した言葉に目を丸くするも、どこか腑に落ちた気もする。
「……ありがと」
「えっと。う、うん……」

 お礼を言われるのも少し違う気がするけど、河村君の家から家主を追い出したのは自分なのだし。
 けれど嬉しそうに顔を綻ばせる河村君に何だか照れてしまって。その上これから一緒に部屋で過ごすのかと思うと、何て言うか……