『将来は公務員になりたいなあ』
 進路指導の講義を受けて、用紙と睨めっこしながらぽつりと呟く。
『雪子は堅実だな』
 智樹は公務員には興味が無さそうだった。
(でしょうね……)

 勝手に決めつけては、けれどこっそりと同意する。

(だってあの子は──愛莉さんは、デザイナー志望だものね)

 智樹の可愛い幼馴染の愛莉さんは、服飾系の専門学校に通っている。彼女の可愛らしい雰囲気には、なんともお似合いな学校だ。
 
 ちらりと智樹を盗み見る。
 少し癖のある黒髪に、四角いフレームの黒縁眼鏡。
 真摯で物静かな雰囲気がとても素敵な智樹。
 でも……

(智樹は真面目だから……)

 だからこそ愛莉さんのような、無邪気な女の子が可愛くて仕方がないんだろうなあ、と思う。
 私は、どちらかというと、自分と似た価値観を持ってくれている智樹が安心出来て好きたったけど……
 そっと息を吐く。

『親の勧めなんだけどね、でも私の性には合ってるみたいだし。それに好きな事を突き詰めて生きて行くのって、カッコいいって思うんだけど、それに人生を全て捧げるのはちょっと怖いかな』

『……俺もそう思うよ』



(なのに……だから、かな……結局あの子を選んだよね。自由に生きるあの子と同じ会社をさ……)