「三上さん、今日ご飯食べに行こうよ」

 金曜日の仕事終わり。
 いつものように気軽に声を掛ける河村君をちらりと見て、ごめんと告げる。

 ──いや、何故いつも通りなのかと不思議に思うところもあるが、思えば河村君は最初からマイペースだった。気にするだけ無駄だろう。

 あの日の翌日、河村君は気遣ってくれたけれど、深入りしないように気遣ってもくれた。
 その心遣いが嬉しくて……
 思わず頬を緩めた自分を叱咤し、ああ重症だと落ち込んだ。

「……今日は美夏と約束してるんだ」

 あれから四日。何となく今日あたり、河村君に声を掛けられるような気がしていて、美夏に声を掛けたのだ。

 

 振られて二か月ですが、いつも一緒にいただけで、もうあなたの事が好きになりました、なんて……チョロすぎて言えない。河村君だって想定外で、驚き困るだろう。