ドアを閉めて鍵を掛けて……

(この鍵もあと少ししたらお別れだ)

 そんな事を思いながら、頭に浮かぶ人物がいた。

 お別れ……

 やっぱり愛莉がいいからと別れた彼女。
 三上雪子が、ずっと頭から離れなかった。

(雪子もずっと、こんな気持ちだったのかな……)

 別れを口にした時、雪子は放心したようだった。
 それでいて、何か……諦めていたような……

(似てる……)

 今なら雪子の気持ちがよく分かる。
 相手を思って自分の気持ちを殺して耐えてきた事。

 雪子は俺の為にずっと、尽くしてきてくれたんだ。
(それなのに……)
 今までの行いが不誠実だったとやっと気付けた。

(だから、きっとやり直せる)

 俺の一途さが好きだと言ってくれた雪子こそ、とても一途な人なのだから。
 雪子はきっと俺を待っていると、確信できた。