『愛莉がすまなかったな』

 電話の向こうの声は複雑そうだ。
 ともすれば義父となる相手だった人。
 
「いえ、僕こそ……すみません。将来を考えていたのに、こんな形になってしまって……」
 
 口にしずらい会話には、気まずい沈黙が度々支配する。

『……いや……それより借りたお金は愛莉に働かせて返すつもりだ。もう少し待って欲しい』
「いえ、それは……」
 縁が切れればもういらない。
 手切金みたいなものだ。

「一緒に生活していたんですから、生活費の一部みたいなものだと思っています。おじさんたちで、愛莉の為に貯金してあげて下さい」

『そうか……すまない、な……じゃあ、これで……』
「はい、失礼します」

 ぷつりと切れたスマホを見れば、終わった事に対する安堵が込み上げてきた。

(喪失感じゃ、無いんだな……)