「覚えてくれてて良かったよ。三上さんて日向の事しか見てなかったからさあ……俺も流石に見ず知らずの女性を家に入れたりしないよ」

 朗らかに笑う河村に思わず毒気を抜かれ、瞳を瞬かせる。

「あ……それはどうも……ありがとう、ございます……」

 ……こんなところでこんなタイミングで元カレの縁で助けを受けるとは……
 ひょっとして今の状況は元カレのおかげ……いや、せいか?? うぬうと口をへの字にして唸っていると、河村が再び吹き出したのでそちらに顔を向ける。

「別れちゃったんだ?」
「うっ……」

 そんな事まで話したのか酔った私よ。とはいえ人の傷口に塩塗るの止めてくれないかな。まだ赤々としてかなり痛いんだけど……?

「仲良さそうだったのに?」
「……上辺だけでしたから」

 それに情を持って接してたのは私だけだったみたいだしね。……それじゃあ駄目だったんだよ、恋人として……

「そんな風には見えなかったけどね」

 ケロリと返される声に私はぎっと眼差しを強めた。泣かない為に。