「ご、ごめんなさい!」
再び平伏し、謝罪を口にする。
「本当にご迷惑をお掛けしました! ……あの、すぐ帰りますからっ」
申し訳無くて目も合わせられないまま、わたわたとドアを探す。
「三上さん?」
「うぇい!?」
突然苗字を呼ばれて変な声が出る。
ばくばく言う胸を押さえて、相手と目を合わせれば形の良い唇が弧を描き、どきりとする。
「やっぱり三上さんだよね……俺の事覚えてる?」
その科白につい顔を顰めてしまうのは許して欲しい。寝起きの嫌な夢を思い出してしまったじゃないか。
けれど目の前はそんな話、当然知る術もない訳で。首を傾げて薄く笑う。
「俺は河村貴也だよ、大学一緒だったろ?」
「……えーと?」
河村……
「ああ!」
記憶の底に眠るあの男を思い出し、ざわっと警戒心が湧く。
「……ふ、フットサル部の……オフェンスで……」
「うんそう」
満足気に頷く男性は河村貴也、大学時代に智樹が入っていたサークルのメンバーだ。
確か人見知りしない性格で、何度か話しかけられた覚えがあるんだけど……
(智樹は苦手にしてたんだよね……)
何がかは良く分からないんだけど、河村君を智樹は嫌ってた。だから私もあまり親しくしないようにと、癖みたいなものがついてしまっている。



