「…はい。ありがとうございます」




心の底から出たそんな言葉と一緒に、自然と笑顔がこぼれた。




もしかして魔王って意外と…いい人?





「っだから!さっきから何度礼言えば気が済……」




振り向いた魔王が、なぜか私の顔を凝視したまま固まった。




「? 魔…じゃない、宝示さん?どうかしました?」






…なんか急に顔もちょっと、赤いような?





「…いや、お前今、笑っ…」



「え?」



「…っなんでもねぇよ!!!」





ハッと我に返ったように私から勢いよく視線を逸らした魔王が、ドアを見据えて




「買い物いってくるわ!!」




と宣言した。





「え、買い物?」



「おーどっかの召使いがぶっ倒れたせいで今欠品中なんだよ俺の命なみに大事ないちごミルクがなこれは生死に関わる問題だろじゃーな!!!」





そしてバンッ!!!と勢いよくドアが閉まる。






早口すぎだしドア強くしめすぎだしほんと怖!!なんて、いつもならそう思うだけだっただろうけど





「…おかゆ、慣れてきたかも」





塩分過多のお粥のおかげか、熱がホントに上がってきたのか




恐怖っていう感情は、今はなくて





体の奥の方がほかほか、あたたかいだけだった。