ぐつぐつと、お鍋で何かを煮込む音がする。



そうだ、きっと…



お母さんが朝ごはんを作ってくれてる。





『おはよう、りの。よく寝てたわねー』





寝ぼけ眼の私を見て笑うお母さんと、食卓で新聞を読んでいたお父さんも、私を見て同じ笑顔を見せる。




『おはよう、りの。いい夢見たか?』






夢なんて見たくない。



だって今、すごく幸せだから。




お母さんとお父さんと一緒で毎日がすごく幸せだから。




お母さんいかないで。
ずっとここにいてよ。





「お母…さん…」




「あ?」






目を開けた私の視界に飛び込んできたのはお母さん、じゃなくて






「寝ぼけんな石コロ庶民」




「魔!?!?」







不機嫌そうに顔を歪めた魔王だった。