「知恵熱だね」




そう断言したのは、ベッドに横になる佑奈を見下ろした保健の先生。




「先生たちのせいですよ!?勉強ばっかさせるから…!」



「はいはい、騒がないでとりあえず今は大人しく寝るー」




佑奈の涙の訴えは軽くあしらわれ、掛布団をすっぽり頭までかぶせられていた。





「大丈夫、佑奈…?」




私が声をかけると、掛布団から顔を出した佑奈が大きなため息。




「はぁ~、最悪だよ。唯一の楽しみの時間に熱出すなんて」



「だね…」





頷いた時、ポケットのスマホが震えた。




取り出して画面を見ると、魔王からメッセージが。






“今向かってる”






どきり、と心臓が高鳴った私を見透かすように、佑奈が「魔王ー?」とニヤニヤしながら聞いてきた。




「早く行きなよ、もうそろそろ花火始まるよ?」



「でも、佑奈一人じゃ心細くない?具合悪いのに」



「ちょっと、やめてよね!?私のために花火すっぽかすとか!魔王に処刑されるよ!!」





わざとらしく顔を歪めた佑奈。





「私は大丈夫だから早く行きな!」



「…うん、じゃあ行ってくる。ありがと」



「楽しんで~」





ニヤけた佑奈の視線に見送られて、医務室を出た。