“お兄ちゃんの人間不信を直して欲しいのっ!”



“お兄ちゃん、人間不信すぎて彼女どころか友達も全然いないの。
このままじゃ孤独死確定だよ!!!”





いつかの、うららさんの言葉を思い出した。




魔王は、有名な大企業の御曹司で、誰もが羨むお金持ちなのに、



もしかしてそのせいで、傷ついたことがある…?





「くだんな」




呉葉さんがソファから立ち上がって、魔王の目の前までくると腕組をして言った。





「そんなこと言ったって、その世界しか知らないくせに。
こんな庶民ごっこして何の意味があるの?庶民の仲間入りができたとでも?」



「…別に、仲間入りなんてしようと思ってねーよ。俺は、ただ…」




そこで魔王の言葉が途切れて。


呉葉さんは呆れたようにため息を吐くと、そのまま玄関に向かって歩いていった。





「ちょっ…呉葉さん、どこ行くんですか?」



「はぁ?」





振り向いた呉葉さんが、私を恐ろしく険しい目で睨みつける。





「家に帰るに決まってんでしょ」



「でも今日は夜遅いし」



「下に車待たせてるから平気。あんっなに寝心地悪いベッドで熟睡できると思う?私は貴方とは体の作りが違うの。じゃ」




寝心地悪いベッドて…



そーいえば魔王もベッドだけは、すごくフカフカで高そうだもんな。




もしかしてお金持ちって、ほんとに体の作りが違う…!?





そんなことを思っている私の目の前で、玄関のドアがバンッと大きな音をたてて閉まった。