「…呉葉さんとは、小さい頃からの知り合いなんですか?」



「…まーな。小2くらいの時か。

家族で船で軽くヨーロッパ周遊してたんだけど」



やばい。話の導入がすでに金持ちだ。




「その船に呉葉んちも乗ってて。

迷子になってたらしい呉葉をたまたま俺が見つけたんだよ。


で、呉葉の両親にすっげー感謝されて、それをきっかけに親同士が意気投合して、勝手に将来結婚させようって話に」



「なるほど」



「ま、俺の父親も都合よかったんだろうな~。
実際西園寺の家と親戚になればかなり安定するし。あいつは損得勘定でしか動かない奴だから」




…父親、と吐き捨てるように口にする魔王の顔は、いつもよりもさらに険しく歪んでいる。


よっぽど嫌いなんだな、お父さんのこと。





「…で、りのは」



「え?」



「そっちこそ何で一人暮らしとかしてたわけ。親は?」