「こないだ、その、友達と話してた話は本当…なの?」


「……うん。ごめん」




だからごめんじゃ…と声を荒げる魔王を手で制して、「私のこと落としたらお金がもらえるっていうのも?」と続ける。




「……うん」



「だ、誰に…!?」



「…知らない」





「はぁ!?知らないわけねーだろっ…」



「ちょっ宝示さん落ち着いてっ!!」





立ち上がる魔王をなんとか座らせた。





「ほんとに知らないんだ」




嵐くんがポツリと、今にも消えてしまいそうな声で独白する。





「前に公園でりのに話したけど、俺野球が怪我で出来なくなって…それからずっと、腐ってた。

普通に、楽しそうに毎日過ごしてる奴らがウザくて、ガラの悪い奴らとツルむようになって。でもアイツらも、俺のこと本当の仲間だとは思ってなくて」




申し訳程度に注文したアイスコーヒーの水滴が、グラスをつたってテーブルに染みを作っていく。




「そんな時、いつものように放課後公園で時間潰してたら、突然知らない男が目の前に現れて俺に5万渡して言ったんだ。

“××っていうファミレスでバイトしてる北浜りのを落としたら、この10倍の金をやる”って」