「うるさいんですけどー!!」



気づいたら嵐くんにバックハグされたまま叫んでいた。



嵐くんが驚いたように私を見たのがわかったけど、勢いのまま口から溢れ出た言葉は止まらない。




「そりゃ私はふつうに庶民だし特にこれといった特技もないしどこにでもいるような人間ですけど!だからって何でそこまで言われないといけないんですか!!」




まさか私に反撃されるとは思っていなかったのか、動揺したように顔をひきつらせる魔王。



「うっ、うるせーな!

石コロに石コロって言って何が悪いんだよ?つかお前いつまでその体勢でいる…」



「わたしの名前は“石コロ”でもないし“お前”でもありませんっ!北浜りのですから!!!」




すごい勢いでまくし立てたせいで、息が切れる。



魔王はみるみる顔を険しくすると





「……知ってるわ」





なんかボソボソ呟いた。





「はい?」



「だから!知ってるわ!!ばぁぁあああか!!!」



「ばかって…ちょっと!!」





肩を怒らせて身をひるがえし歩いていく魔王。





「…感じわる!!」


「たしかに感じ悪いね~」


「っ!?嵐くん!?」




耳元で聞こえた距離に驚いて隣を向くと、予想以上の近さに嵐くんの顔があって思わず飛びのいた。




「なんか傷つくなその反応~」


「ご、ごめん。魔王との言い争いに夢中になって嵐くんの存在一瞬忘れてた」


「ひどっ。てか魔王?」


「あーうん、魔王って呼ばれてるんだよねあの人。学校で…」




魔王が歩いていった方向を見ると、もう角を曲がってしまったのか魔王の姿は見えなかった。