「おい」



嵐くんを鋭く睨みつけたまま魔王が言った。




「帰るぞ。こっち来い」





…これ、もしかして私に言ってる?





「あ、はい…」


「やーだよ、だから言ったじゃん?俺とりのは今からゴハン行くんだって」




魔王のところに行こうとしたけど、嵐くんが引き止めるように後ろからギュッと抱きしめてきた。



後ろから…抱きしめて…って




「ちょっと何してんのっ!?離れて!」


「やだー」





すぐ耳元で嵐くんの間延びした声がする。





ほんとに何この状況!?



魔王はいつもに増してダークモードの顔してるしっ!!




「…おまえ」



ギリ、と魔王の口が歪んだ。





「もしかして好きなの?そのド庶民女のこと」





ド庶民女って…間違いなく私のことだよね?




「だったらどーする?奪い返す?」


「べつに。つか、そーとー趣味悪いなお前。そんな何も持ってねー貧乏人選ぶとか頭おかしーんじゃねーの」




…えーと。




「金もねーし大して美人でもねーしそんなどっこにでもいるような石コロみたいな女だろ?

わざわざ選ぶほどのもんじゃねーだろ」




もしかしなくても私今、めちゃくちゃ悪口言われてる!?