ベンチに気だるそうに腰かけた魔王が、カチ、と缶のプルタブを開ける音がした。



「……いえ。わかりました。…わかんないけど」



「……ふっ。どっちだよ」




一瞬目を軽く見開いた魔王が、次の瞬間には吹き出して。





……え…





「今…」





笑った、よね!?





「なんだよ」





だけど次の瞬間にはいつもの100%仏頂面。





「幻!?」



「はぁ?何が」



「い、いえ別に」






いや違う。


たぶん見間違いじゃないよね。




にゃにゃ丸に向ける笑顔とも違う。





魔王って、フツーに笑えるんだ…






なんか…






学園を恐怖におとしいれる魔王、じゃなくて。




笑うと、どこにでもいるフツーの男の子みたいなんだな。





「…いつまで突っ立ってんだよ」



「え?」




「座れば」






ん、と軽く顎で隣をしめす魔王。







「あ…はい、では。失礼して」






おずおずと、人ふたりぶんの距離を空けて、魔王の隣に腰かけた。