わたしはあの木造アパートで一人暮らしをしていた。



お母さんは小さい頃に病気で死んでしまったから、家族はお父さん一人。




だけど、今は全国各地で出稼ぎ中。




というのも、1年前、細々と営んでいた家具屋がついに倒産した。




お父さんは先祖代々受け継いだ店をそう簡単には潰せない…と死力を尽くしたみたいだけど


近所にできた海外雑貨を取り扱う大型インテリアチェーンの勢いに飲まれ




呆気なく倒産した。多額の借金を残して。





わたしもお父さんについていく予定だったんだけど、お父さんは私を今の高校…旭ヶ丘高校に通わせることに拘り



私はここに残ることになった。





お金はないし、家はボロいけど、バイトして学校行って、それなりに平和で楽しい毎日のはず…だったのに!





「令和の家なき子、か…」




一人で笑えない冗談を言う。うん、全然笑えないくらいには、今わたしは正常だ。





…よし!!!どうにかしよう!!!





久しぶりに顔を上げると、隣に立つ美少女の存在に気づいた。




スラッと高い身長に、整った横顔。長く艶やかな黒髪。まるでお人形さんみたい…





思わず見とれていると、なぜか突然黒髪美少女が






勢いよく道路に飛び出した。