放課後に(なったらしい)僕は自転車を漕いでいた。

行きたくない。
月下美人に行きたくない。
また絶対アイツがいる。

そう思いながらも一抹の思いで駐輪スペースに自転車を止め、どデカい誰が聞いてもため息だとわかる息の漏らし方をした。
中が薄ら見える窓付きドアからは特に察する事は出来そうにない。
意を決して生唾飲んで、ドアをドアベルのチリンチリンと共に勢いよく開けた。

「いやいやお婆さま、僕は至って普通のことを言ったまでですよ」

いましたー!
そしてめちゃくちゃ話し込んでましたー!
カウンター席で人のおばあちゃんめちゃくちゃ口説いとるやん!!

「そんな、ふふ!あなた本当に上手ね。しょうがないからオムレツも作ってあげるわね!
あぁ、渉かい。」

一気にトーンが下がるの辞めてください。

「50半ばの婆さんが色目使うのやめて下さい。。
そして僕を見るなりがっかりするのは失礼ですよ。。」

「うるさいわねえ。
婆ちゃんじゃなくお姉さんとお呼び!!!」

「ふふ。野々宮くん大変ですね!」

「あら知り合いなのね!」

もうお前のせいでぐちゃぐちゃなんです。
朝から感情が止まることを知らないのは初めてだ。