始業式!
一年の始まり!
友達たくさん作るぞ!

と言った気合は必要ない。
何分エスカレーター式の学校だから中学の時からの知り合いがほぼそのままいる。
寧ろ外部生(と他のクラスのやつが言っていた)が物珍しい。

駐輪場が校門すぐ両サイド(右が高校で左が中学)、中学の校舎が校門より左手前、中学のグラウンドが右手前、高校の校舎が校門より右手奥、高校のグラウンドが左手奥にあり、真ん中の石畳で長々と続く道を歩いていくスタイルである。

流行りモノが好きな吉崎さん達はどんな奴らが外部生として来たかチェックするが故に、早め登校するねーと言っていたからもう門番しているだろう。

僕はひとまず中学の時からの変わらない黒の自転車を止めて、高校の制服、と言ってもサイズとネクタイの色が黄色から緑に変わったくらいしか感じない制服の裾をそっと直した。
カゴに入れていた学生鞄を持って一息、今年も平凡でありますように。
石畳の方へ歩いた。

吉崎さんはやっぱりいる。
中学の校舎より高校側にある植樹(多分サクラ)の木の下にいた。
ただまあ吉崎さんと仲が良いわけではないので話さなくても良いかなと思って横を通り過ぎようとした。

「野々宮」

え、僕ですか?
いやいや、中学の時そんな仲良くなかったでしょ。

「あ、っす、ハハ。」

ニワトリのような首の動き方をして愛想笑いした。
いや、ここはモテる男のように「やあ、吉崎さん!おはよう!今日も早いね!ハハハ!」が良かったのだろうか。
その方が「モテ男の野々宮渉の非日常日記」というタイトルに変わったかもしれないなあ。

「大変なの」

「え?」