自分以外の女性に心を奪われて、浮気をしていたなんて思わなかった。

 電話を切った瞬間、爽馬はなずなに気づいて驚いている。

「なずな!?」

「どうしてよ・・・・・・」

 声を震わせながら、爽馬に怒りをぶつける。

「いつから浮気していたのよ!?」

「違う! ご、誤解だよ!」

 慌てて爽馬がなずなに触れようとしたので、その手を振り払った。

「何が誤解よ! この嘘吐き!」

 持っていたマカロンセットを足元に投げつけた。

 なずなはそのまま部屋から飛び出して、エレベーターまで走った。

 爽馬が追いかけてきたので、急いでボタンを押してエレベーターの扉を閉めた。

 エレベーターが途中で別の客が乗ろうとしているので、なずなもその階で降りた。

「・・・・・・信じられない」

 歩きながら誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。

 まさか彼が浮気をしていたなんて、正直今でも驚いている。

 しかも相手はなずなの姉、美和(みわ)だ。

 美和はあだ名で「みより」と周囲の人達に呼ばれている。