道哉お陰で少しずつ傷が癒え始め、また同じ部屋で眠れるようになり、家事も一応できるようにまではなったものの、それでもまだ元気のない私に

「紫苑のセンスは本当に素晴らしいよ。これからもケアキャップを作って、欲しい人に提供してみたら?」

そんな道哉の言葉がきっかけで、ケアキャップを作る仕事を始めたのだ。

最初は、私のような素人の駄作で喜んでくれる人がいるのかと半信半疑だったが、実際に癌患者の人たちにプレゼントしてみたら、皆さんとても喜んでくれた。

そのことは、私にとって大きな救いとなり、気付けばこの仕事に生き甲斐を感じるようになった。

とは言え、この仕事に利益はないため、続けていられるのも結局のところ、道哉がしっかり稼いでくれているお陰なのだが…。

敷居が高いと思っていたメンタルクリニックにも、気の弱い私のために道哉は同伴してくれていたが、いつしか、私には通院も精神安定剤も必要なくなった。

道哉には心底感謝しているのに、無力な私は、疲れて帰ってきた道哉が、心地よいと思ってくれる家の環境作ることぐらいしかできない。

あとは…この命あるかぎり、彼を愛し続けることだけだ。