「……はーあ」


無意識に出てしまった、溜息。一つのベッドには裸の男女。


「あのさ、即行で溜息つくのやめてくんない?」


溜息を聞いた彼は、少し笑って横目でこちらを伺った。すぐ隣には煙草を吹かす(ゆう)の姿。
優とは所謂、浮気相手。私にはちゃんと付き合っている彼がいるし、優にも同じように彼女がいる。


「あー、ごめん。なんかもう生理現象っていうか」
「そんなに俺と一緒に居るのがつまんねぇの?」
「ふ、優って女の子みたいなこと言うね」
「……真面目に聞いてんだけど」
「つまらなくなんかないよ。寧ろ優の隣は居心地いいし。つまらなかったら、こうやってわざわざ優に会ったりしないしね」
「そりゃそうだけど。じゃあ何、彼氏と上手くいってねぇの?」


いまひとつ納得がいかない、といった表情で私に訴えて来る彼。


「あー、どうなんだろう」
「…どうなんだろって」


…あ、呆れてる。


「ここ最近会ってないし」
「…へえ」


私はただ、寂しさを優で埋めているだけなのかもしれない。
貴方が優しく受け入れてくれるのをいいことに。
だけど、それは確かに温かくて。つい、寄り掛かってしまう。


「なに寂しそうな顔してんの」
「え、嘘。私そんな顔してる?」
「すっげーしてる」


すると、優は覆い被さるように大きな腕で私をぎゅっと包み込んでくれた。


「ゆ、う…」


フワッ、と煙草の匂いに包まれる。


「優、すきだよ」
「…なに、どしたの」


今にも泣きそうになるのを堪えた。
優は大きな腕を解くと、凄く優しい眼で私を見つめてくれた。
優のことは好き。だけど一番じゃない、ただそれだけ。

お互いが惹かれ合って求め合う、幾度も。

優だって、同じだ。
付き合いたいとかそういうのじゃないし、付き合ったところで長くも続かない。

私と優がこんな風に続いてるのは、きっと今の関係のままだから。

…そんなの解っている、お互いが。


「二番目にね」
「なあ、最後のそれいらなくね?」
「…ふふ」
「もう一回する?」


再び、押し倒される。天井を背景に映る優の目は、なんとも挑発的だ。


「…しない」


だけどそれを自らに断ち、優から視線を逸らした。


「え、なんでだよ!俺のこと大好きなんだろ!めちゃくちゃ」
「だから二番目だって言ってんじゃん。つーか、自分で『俺のこと大好き』とか真顔で言うのやめてくれる?しかも『めちゃくちゃ』まで言ってないから」
「いーじゃんかよ!」
「だって余計バカに見えるから…、優くん」
「加奈にバカにされてる感じが、なんかすっげームカつく!」


それでも優は笑って。手を伸ばして、私の髪に触れると、これでもかとわしゃわしゃと撫でてくれるんだ。


 たとえ、いちばんじゃなくても
  (二人の関係はこのままでいいから)