あんたなんかの為に、泣きたくなんてないのに。

きっとあいつの彼女なんて私だけじゃない。そんなことくらい解ってる。
……そうよ、あんな男どうだっていいじゃない。優しくしてくれる男なんて、他に幾らでもいる。

そうやって必死に自分に言い聞かせるのに。
結局行き着くのはいつも彼のところ。
もう私には(みなと)じゃなきゃ駄目になっていたんだ。

退屈な大学の授業を抜け出して、外のバルコニーへ出ると、吹き抜ける風に当たってただ呆然としていた。


「……美紗?」
「あおい」
「なにやってんの、こんなところで」


「気持ちいいね、此処」だなんて扉を開けて、私と同じ様に外の空気を吸いにきた蒼生(あおい)に「うん」と適当に返事を交わした。

他の男の人と一緒に居たって。
目の前の蒼生と湊を無意識のうちに比べてしまう。


……なんで?どうして。いつからこんなにも彼に依存するようになってしまったんだろう。

悔しい。悔しい悔しい悔しい。

好きなのに、こんなにも大好きなのに。
好きだけじゃどうにもならなくて。
堪え切れずに溢れてくる涙を、気付かれない様に必死で拭った。

私の想いは所詮、一方通行。叶うはずのない恋。