「尾関さん、あれでよかったっすか?」

弘人から離れると、覆面のうちの1人が声をかけてきた。

「いいんだよ、これくらいやっときゃもう2度と手なんて出すまい」

「まあ、そうっすよね」

覆面の5人組はクラブで働いていた当時にお世話になり、現在は自分のプロデュースでメジャーデビューしているヒップホップグループだ。

「悪いな、忙しいのに頼んじまって」

そう言った尾関に、
「これくらいいいっすよ。

尾関さんから話を聞いた時、マジでムカついたんで」
と、覆面を外した。

「それじゃあ、気をつけて帰れよ」

「あーい」

尾関は彼らと別れると、家路へと足を向かわせた。

「その前に、コンビニで甘いものでも買ってくるか」

柚愛のことを思いながら、尾関は目についたコンビニへ方向を変えた。