公然の秘密

「でも、どんな人なのか知りたいし…もし帰国することになった時のことも考えたら…」

「帰国することになったらあいさつすればいいだけの話だろ」

「そ、そうだけど…」

これ以上は話をするのは無理だと思ったし、弘人も話をするのが嫌そうだった。

柚愛は話を切りあげると、
「これ、寝室に置いていい?」
と、荷物の確認をした。

「うん、いいよ」

弘人の返事を聞くと、柚愛は荷物を置きに寝室へと足を向かわせた。

(ただあいさつをするだけなのに…)

まるでこれ以上はこの話をしたくないと言う様子の彼に対して、柚愛はどうすればいいのかわからなかった。

このことがあって以降は弘人にその話をするのはやめたし、彼と別れるその日まで両親と顔をあわせることは1回もなかった。

 * * *