「じゃあ、この辺で」

「何かあったら連絡しろよ。

いつでも飛んでくるから」

仕事先であるスーパーマーケット『ハッピーマン』の従業員専用口の前で尾関と別れた。

彼の後ろ姿を見送った後でそこへ入ろうとしたら、
「柚愛!」

弘人が現れた。

柚愛は彼を一瞥すると、ドアを開けようとした。

「ちょっと待てよ!」

弘人はそんな柚愛の手をつかむと、自分の方へと振り向かせた。

「何ですか?

私、これから仕事なんです」

そう言った柚愛の声はとても冷たかった。

「お前、“お世話になりました”ってどう言うことなんだよ!?

部屋を覗いてみたら、お前の着替えは全部なくなってたし」

「…部屋を覗いたんですか」

柚愛は弘人を冷たい目で見た。