柚愛も尾関も正直なことを言うと、弘人には同情のようなものを抱いていた。

彼が少しでも両親や周りの人間から愛情を受けて育っていたら、人に愛される喜びと人を愛する幸せを知っていたら…こんなことにはならなかったのかも知れない。

「自分から変わればいいなんて言う人もいるけれど、それで変わって周りから愛される人間になることができたら誰も苦労しないんじゃないかと思うの」

そう言った柚愛に、
「俺もそう思うよ。

創作ではそのように描かれて最後は自分の力で乗り越えて幸せをつかむなんて言う感じで終わるけれど、全部が全部そんなにも都合よく行く訳がないと思ってる。

自分から壁を壊して前へと進んで行くのは大切なことだと思うけれど、そんなことができない人間の方が多いんじゃないかと思う」
と、尾関は言い返した。