公然の秘密

会場を後にすると、
「まだ信じられないな…」
と、尾関は言った。

「加納が亡くなったのは夢で、俺たちはまだ夢を見ているんじゃないかと思うんだ…。

これが夢ならば醒めて欲しい…。

悪夢なら早く終わらせてくれって感じだな…」

尾関は息を吐いた。

「…警察は、加納さんを殺した犯人を探しているんだよね？」

「知りあいが言うには目撃証言とか近くの防犯カメラの映像からいろいろと探してるって。

だけど…あの時間帯は人も通らないそうだし、ましてや廃工場だから誰もいない訳だし…」

要は、難航していると言うことだろう。

「俺、そいつをぶん殴ってやりてーよ！

加納の家族の痛みや悲しみをそいつにわからせてやりてーよ！」

尾関は泣き出しそうな声で叫ぶように言った。