公然の秘密

「朝から晩まで母親は働きに出て、加納も高校に入ってからはバイトを始めて家計を手助けしていた。

だけど、彼女が高校2年生の時に母親は病気で倒れた。

彼女曰く、母親は元々躰が弱い人だったから無理がたたったのかも知れないって。

自分が本格的に家族を支えていかなきゃいけないと思った加納は小学校の先生になる夢をあきらめて、高校卒業後は就職をした。

中学卒業後は働きに出ると言う4歳下の弟を“高校だけは出て欲しい”って説得して高校に通わせて、その学費を加納が1人で払ってた」

「1人で…?」

そう聞いた柚愛に尾関は首を縦に振ってうなずいた。

「弟は高校卒業後に就職をしたんだけど、そこで上司のパワハラにやられて2年で退職をしたそうだ。

そこから3年は心療内科に通って治療を受けていたそうだ」

尾関の口から、次から次へと出てくる彼女の波乱万丈な人生に柚愛は耳を傾けて聞いていた。