その日の夜。

「ちょっと待って…」

「先に仕掛けてきたのは麗一さんだよ」

「だからと言って…」

「今さら文句を言うのはなしだよ」

「いや、こればっかりは言わせてくれ!

隠し技なんて聞いてない!」

尾関はテレビ画面を指差した。

画面には今自分たちがやっていた格闘ゲームが映っていた。

「これはマジでないって!

そこまでするかって言うレベルだぞ!」

自分が動かしていたキャラクターが負けてしまったことに尾関は両手で頭を抱えた。

「だって麗一さんが強過ぎるんだもん!

私、5連敗しているんだよ?

このままじゃ埒があかないと思ったから隠し技を使わせていただきました!」

「だから、ずるいって〜!」

尾関はすねた様子で大の字になって寝転んだ。