公然の秘密

「そうか、そう言うことか…」

「だから、満足できなくて泣いていた訳じゃないから」

「うん…」

尾関は柚愛の額に唇を落とした。

「柚愛」

「うん」

「俺、今が1番幸せかも知れない」

尾関は微笑むと、
「デビューをした時も、曲が売れた時も、賞をもらった時も幸せだったけど…今が1番、幸せだと思うんだ」
と、言った。

「我ながらおかしななれそめだったけれど、今が幸せだからよかったと思うんだ」

「私も、麗一さんに会えて結ばれてよかった。

始まりはどうであれど、私も今が幸せだよ」

「柚愛」

尾関の顔が近づいてきて、
「ーーッ…」

唇が重なった。

その唇に感じる間もなく、柚愛はまた彼の熱に溺れた。