公然の秘密

「ーーッ…」

唇に触れたその温もりに、尾関とキスをしたと言うことを知らされた。

(本当に、キスをしているんだ…)

今、目を開けたら…もしかしたら夢で終わってしまうのではないだろうか?

尾関とキスをしていることも、尾関が目の前にいることも、全て夢の中の出来事になってしまうのではないかと思った。

唇が離れたその瞬間、柚愛はゆっくりと閉じていた目を開けた。

そこにいたのは、尾関だった。

「ーーッ…」

(夢じゃなかった…)

そのことに、柚愛はホッとして胸をなで下ろした。

「ーーよかった…」

尾関がそんなことを呟いたので柚愛はよくわからなくて首を傾げた。

「夢じゃなくて、よかった…」

自分と同じことを思っていた尾関に、
「ーー私も…」
と、柚愛は返事をした。