「門谷さん、何かありましたか?」

「どう言う意味ですか?」

「わたしの前では平気な顔をしていたけれど、本当は落ち込んでいるんじゃないかと…」

「ああ、大丈夫ですよ」

わたしの質問に、高天原さんは笑った。

「どこか吹っ切れたような顔をして仕事をこなしていますよ、彼は。

身代整理を済ませたと言っていますし」

「ああ、はい…」

身代整理に関しては特に何も言わないことにした。

「来生さん」

高天原さんがわたしの名前を呼んでピタリと足を止めたので、わたしも一緒に足を止めた。

「仕事以外で僕を呼んだと言うことは、話があるんですよね?」

そう聞いた後で、
「なんて、自意識過剰が過ぎましたね」
と、高天原さんはフフッと笑った。