「何だか変な感じがしますね」

先日はお互いにスーツだったのに、今日は私服である。

「よく似合っていますよ」

そう言って褒めてくれた高天原さんに、
「ありがとうございます、高天原さんも似合っています」
と、わたしは言った。

「ありがとうございます」

高天原さんは照れたように笑った。

2人で肩を並べると施設の中を一緒に歩いた。

特に何の目的もなく歩いているだけだけど、それだけでも楽しいと思った。

「門谷を振ったそうで」

高天原さんが話しかけてきた。

「振りましたね」

いずれは知ることである。

だから、正直に返事をした。

「彼の気持ちに答えることができなかった…と言うのが理由です」

そう説明したわたしに、
「なるほど」

高天原さんは返事をした。