門谷さんは自嘲気味に笑うと、
「でも、あなたに俺の気持ちは届きませんでしたね。

先ほどあなたに頬をたたかれて、その様子を思い知らされました。

まあ、当初が当初だから仕方がないのでしょうけれど」
と、言った。

「門谷さん…」

わたしが名前を呼んだら、
「社長ーー高天原さんが好きなんですよね?」
と、門谷さんが言った。

「えっ…あっ…」

ここにいない彼の名前を出されて、わたしは何を言い返せばいいのかわからなかった。

「隠さなくていいです、あなたはわかりやすい人ですから」

そんなわたしに向かって門谷さんは笑った。

「そ、そうですか…」

わたしは頬に手を当てて彼をジロリとにらみつけた。

「高天原さんが好きなんですね?」

そう聞いてきた門谷さんに、
「はい…」

わたしは返事をすることしかできなかった。